発傍聴席、宛インターネットの深海

良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。(法廷での宣誓文より)

痴漢に手を染めた大学生(迷惑防止条例違反)

大阪地裁堺支部、私が訪れた日最後の裁判です。

ところが事件名を見た私は面食らいました。

「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例違反」

……長いぞ? ヤンキーがなにかしでかしたのか?

開廷まで時間がなかったので調べる間もなく傍聴席に座りました。(スマホを触ってはならない)

  •  なよなよした被告人

傍聴席には私ひとりだけ。しばらくして弁護人と、母親らしき女性に連れられた若い男が入ってきました。

被告人席に座った男を母親が傍聴席から見守ります。男はリクルートスーツでしょうか、どうも着せられているような印象を受けます。黒髪はボサボサ、背中は丸く、じっと床を見ていました。表情もどこか自信なげな……なんだか今をときめく若手棋士に似ています。(※決して言外に嘲笑しているわけではありません)

 

  • 長い条例の正体

 後から調べて知ったのですが、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」とはいわゆる「迷惑防止条例」のことでした。ほぼすべての自治体にこの条例は定められており、当初は社会問題になっていた「愚連隊」による粗暴行為に対処するべく制定されたそうです。(だから正式名称がいかつい)

 しかし現在では、この違反のほとんどは痴漢行為によるものです。暴力とは無縁そうな男の風貌の理由がわかりましたね。とはいえ性犯罪は心身への暴力に変わりないです。

 

  • はじめての説諭

 説諭、正しくは訓戒だそうですが、この日最後の裁判だからか、主文(懲役6ヶ月執行猶予3年)の後、裁判官は被告人に対して丁寧に諭しました。

「意味はわかりましたか? あなたは有罪となりましたがすぐに刑務所に行くわけではありません。3年間おとなしくしていれば行かずに済みます。ただ、また犯罪に手を染めれば次の裁判では裁判官が重い罪を宣告するかもしれません。あなたは大学生でまだ若いのですから、今後はこのようなことをせず、学業に専念してください」

支部の3階にあるこの法廷で、若い男性裁判官は一日中犯罪人を裁いてきたわけですが、締めくくりのようにそう告げ、閉廷となりました。

被告人もこの時ばかりはまっすぐに裁判官を見つめていました。