発傍聴席、宛インターネットの深海

良心に従って、真実を述べ、何事も隠さず、偽りを述べないことを誓います。(法廷での宣誓文より)

泣きじゃくる実の子の前で、男は元妻を(強制性交等致傷)

(※本件はその犯行態様が極めて悪質なため、気分を害する恐れがあります。あらかじめご了承ください。また、被害者のプライバシーには十分注意を払っております)

  • 事件の概要 

離婚後、同居していた家を引き払うことになったため、元妻はその家の片付けをしていました。その最中にガス業者を装った元夫が現場に侵入。目出し帽にサングラス姿で正体を隠した被告は、実の子がふたり、被害者を制圧しようとする姿に泣き叫びましたが意に介さず、腕を抑えるなどの暴行を加えました。(致傷、全治3日の打撲などを負う)

体力の限界が近づき、抵抗する力を失った被害者は陰茎部を挿入され(強制性交)、1分ほどで膣内に射精され、被告はすぐに現場を立ち去りました。

その後、素知らぬ顔で現場に戻ってきた被告はやってきた警察官の聴取に無関係を装っていましたが、30分ほどで自白。緊急逮捕となりました。

  • 被告人の経歴

元夫はバイクの窃盗で少年院送致となり、退院後は保護観察付となりましたが以後の前科はありません。グレていたために入所中、悪い交友関係を断つために家族で引っ越しをしています。

16才より働き始め、21才のときに後の被害者となる女性と結婚、長男と次男をもうけました。ところが夫婦関係はうまくいかず、離婚。子の親権は元妻へと渡りました。

  • うまくいかなかった夫婦関係(夫の視点)

結婚当初からお互い、異性とのやり取りが多かったためにケンカが絶えず、妻が暴力を振るうこともありました。育児を巡っても口論が多かったそうです。妻は隠れて夜の仕事をしていたために、長男が自分の子ではないのではないかと疑いをもっており、次男についても妻の合宿免許後に妊娠が発覚したため、同じように懸念します。

一度、激しいケンカの際には近隣住民の通報を受け警察沙汰となっており、そのときに妻から保温弁当箱を投げつけられた夫は頭を縫うケガを負っています。警察に関して言えば、夫が勝手に銀行口座から金を引き出したとして、防犯カメラを確認するために妻が警察へ相談したこともありました。

次男が生まれて数ヶ月経った頃、妻の不倫が発覚します。これをきっかけとして、離婚を考えるようになりました。

  • うまくいかなかった夫婦関係(妻の視点)

結婚後、妻は借金をしたため、返済のために夫が正社員となりました。クレジットカードとそのキャッシング、そして長男が生まれたために購入した車のローン、合計300万円ほどにも膨れ上がりました。夫の収入がなかなか安定しないために返済は滞り、任意整理をするもその返済も追いつかず、ついには自己破産をしてしまいます。

夫が前述のように勝手に金を使ったり家族カードを使用するなどしたために家計は火の車だったようです。また、妻の不倫後、夫も不倫をします。

このような状態の中、離婚を決意しました。

  • うまくいかなかった夫婦関係(第三者の視点)

証人として共通の知人、そして夫婦の両親が出廷しました。

共通の知人は元夫を擁護する発言が多い印象でした。被告は元妻の尻に敷かれていた様子であったといいます。離婚後、元妻に未練のあった被告に、元妻が「次男は夫の子だが、長男は違うかも」と言っていたことを伝えます。父子関係が変わることは考えず、ただただ被告の未練を断ち切るために教えたのですが、逆に悲劇を呼ぶ要因のひとつとなりました。また、事件後もこの証人は「この事件は示談で収めるべきだ」と思っています。

被告の母は涙声で被害者である元妻に謝罪していました。この事件により、彼女にとっては今後、孫ふたりに会えなくなることも大きいです。被告の監督責任をまっとうすると誓い、慰謝料などのお金を工面したのもこの母です。

  • 離婚後の元夫婦の関係

離婚後しばらくは同居しており、性交渉もありました。ところが、別居した後、2週間後に早くも元夫は復縁を求めます。10~15分おきに電話がかかってくることもあり、元妻はさすがにしつこいと感じましたが、数年後元夫が安定していたら復縁してもいいかと考えていたそうです。しかしながら元夫への好意はもうありませんでした。

ところがある日、無断で元夫が保育園に子供ふたりを迎えに行きました。公園で遊んでいると、長男が「(ママが)裸で男の人と寝ている」と泣きながら訴えます。この日、父と帰りたいと言った長男はそのまま夫方へ、次男は元妻が連れて帰りました。

  • そして犯行へ

妻への未練、裏切られた気持ち。「苛立ちがつのり、もう逮捕されてもいいやと思った」と被告人質問で元夫は振り返っています。

事件当日の昼過ぎ、元夫は元妻へ「ガス業者の立ち会いに来てくれ」と元妻が同居していた家へ向かうよう電話します。子供を連れてこないようにとも要求しましたが、曜日感覚の狂っていた元夫はその日が日曜日で、保育園に子供がいないことに気づきませんでした。

仕事終わりに時間のなかった元妻は、子供を連れたまま家に到着。子供をベランダで遊ばせていました。

犯行を決意した元夫は某圧縮陳列で有名な店舗へ赴き、ローションやスティック、さるぐつわ(ゴルフボール大と説明がなされたためギャグボールと思われる)などのアダルトグッズ、目出し帽を購入し、百均で結束バンドを買い、犯行現場となる家へ向かいます。服装はガス業者を装うために作業着です。

  • 息子がいるとわかっても止められなかった

元夫は目出し帽を被り、サングラスをかけました。インターホンを鳴らしましたが故障していたのか鳴らず、代わりにノックします。元妻がドアスコープを覗くと作業着姿の人が立っていました。首から上は映っていなかったそうです。「ガス業者です」と声を出しましたが元妻は正体に気づけませんでした。

ドアを開けた瞬間、男が被害者に襲いかかります。まず口を抑え、押し倒された彼女は仰向けに倒れました。「キャー!」と叫び、蹴ったりなどして抵抗するも、逃げようと這いずった際にのしかかられ、うつ伏せに抑え込まれます。髪をつかまれ、背後から首を締め付けられました。

犯人の正体はまだわかっていません。殺されると思った被害者は何が目的か聞いたものの返答はありません。異変に気づいたふたりの子供は別室で泣き叫んでいました。

被害者はトンカチを持ってくるように頼むも、持ってこなかったため、とにかく子供に逃げるようにと言いました。子供が逃げたあと犯人は別室との間のドアを閉めました。

この隙に被害者は玄関へ逃げようとしましたが、手を後ろ手につかまれました。ギャグボールを装着されそうになるのを振り払い、結束バンドからも逃れることができましたが、ここで体力の限界に達しました。

犯人がズボンを下ろした瞬間、目的がレイプであると知ったのですが、現れたパンツに被害者は口を開きました。「パパ?」そのパンツは夫婦のときに被害者が購入し、洗っていたものだったのです。

犯人は無言のままいわゆるバックの姿勢で陰茎を挿入し、射精しました。

被告が罪悪感で家に戻った時、被害者は110番通報をしている最中でした。会話をしようとしましたが、時間がなく謝れず(被告人の主張)、まもなくやってきた警察官に自白し、緊急逮捕されたのです。

  • 事件後

被害者は警察病院で検査を受けました。首と腕に痛みがあり、感染症予防の抗生物質モーニングアフターピルを処方されました。

現在は心療内科に通っており、安定剤(抗不安薬か?)と睡眠導入剤を処方されているほか、夜に歩いているときなどに人が怖いそうです。精神的には比較的安定してきたものの、薬がないと子供に八つ当たりしてしまうこともあるといいます。

また、子供にもトラウマが埋め込まれ、作業着姿の男を見たり、犯行現場付近に行くと泣き出してしまうとのことです。

  • 求刑、そして判決

検察側は懲役6年を求刑、弁護側は懲役3年の執行猶予付き判決を求めました。

結果は、懲役5年の実刑判決でした。

被告人には稚拙な面が認められるものの、計画性があり、その犯意は強固であった。被害者の処罰感情が強いことにも納得がいき、同様の事例で言えばやや軽い~中程度のものであるが、今回の判決に至った、という理由です。(処罰感情の強さは、被害者がすべての公判に出廷したことからも伺えます。別室でなくパーティションで目隠しをされて法廷にいらっしゃいました)

 

性犯罪の厳罰化は法改正という形でも為されましたが、実際の裁判でも重く処断されます。被害女性の精神の回復と、ふたりのお子さんが健やかに成長することを願ってやみません。