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事件の概要
被害店舗(飲食店)の従業員であった被告人は、閉店後の店に合鍵を使って侵入。レジから現金1万円(1000円札x10)を盗取した事件。
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恩を仇で返した男
被告人はひったくりで懲役1年8ヶ月、執行猶予3年の猶予期間中の身であった。
ひったくりについては両親に話しておらず、当時の保釈金はなんと雇い主である店長さんが用意したのだ。
前回裁判で禁酒を誓っていたが、酒や遊びに金をつぎ込み、浪費生活が根付いたままであった。手取りが20万円あったにも関わらず、借金をつくり、給料の前借りすら頼み込む始末。
果てには、レジの金に手を出すようになる。
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赤外線カメラはすべてを見ていた
レジから金が無くなることを不思議に思った店長さんは、赤外線カメラをこっそり設置した。
事件当日、給料日の3日前で財布が底をついた被告人は本件犯行を決意する。
「覚えてない」ほど繰り返した犯行であり、1万円であればバレないと考えていた被告人だが、まんまと罠にかかった。カメラには被告人の顔がバッチリ映っていたのだ。
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優しい店長さん、決意する
「バレても刑事になるとは思わなかった」とは被告人の弁で、実際、父親が弁償を申し出た。しかし被害総額は100万円をくだらないそうで、店長さんはこれを拒絶。
「出所後でも30代だからやり直しがきく」とし、示談は成立せず。当然といえば当然である。
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ポエミーな父
細身でメガネをかけたスーツの男性は、証人尋問の直前、傍聴席の店長さんへ深々と頭を下げた。
本件の保釈中、被告人は父親と同居しているそう。(これはほとんどの自白事件に見られる流れである)しかし、事件について息子と話し合いはしていないと言い、裁判長の提案で、法廷内にて息子に語りかけた。
「自分の名前の意味を考えて」(抄)
……別に裁判所は響きのいいことを言う場所ではない。甘そうというか、無責任というか、どこか詩的で浮いた存在の証人だった。
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公判終盤
被告人はアルバイトで稼いだ金で贖罪寄付をした。その額なんと5万円。これで斟酌されるとは到底思えない。
検察側は懲役2年を求刑。対して弁護側は寛大な処分を要求するにとどまった。
判決は、懲役1年2ヶ月(未決勾留日数20日を算入)だった。
軽く感じるのも無理ない話だが、確認されている被害額は1万円のみであること、ひったくりの懲役1年8ヶ月が執行され、懲役2年10ヶ月の実刑となること、などを考慮し、求刑に対して短めの量刑となったと言える。
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この裁判を傍聴した理由
最終陳述にて父親の言葉に対する感想を聞かれ、被告人は「親孝行したい」と答えた。そして、裁判長に促されて、傍聴席の店長さんに向かって謝罪した。
私はこの裁判官のファンだ。私でなくとも傍聴グループみんなの人気者なのだ。
そして、大阪地裁503号法廷は、最近では殺人未遂や強盗致傷などを扱っている広めの法廷である。そこで窃盗の公判が開かれるのは珍しいなと思い、取材に向かったのであった。
幸いにも、店長さんから貴重な資料をたくさんいただき、美味い料理もいただいて大満足であった。
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資料コーナー
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お食事編
もちろん餃子を最初に食べたが、私の撮影テクニックが悪かったので割愛……。あと、チンジャオロースは大好きなので撮る前にたいらげてしまった。
取材に協力してくださった店長さん、店員の方々、本当にありがとうございました。
みなさんも食べに行って応援しましょう!