今日もまた、傍聴席に座っている。

雑記ブログですが、主に裁判傍聴記・事件現場取材を書いています。

家族を奴隷扱いした養父は小4の娘を(強制性交等致傷、傷害、暴行)

  • 真にマスコミが報じたがらない事件 

一般的に、主語が強い事件は優先的に報道される。会社員が覚醒剤を使っても記事にならないが、芸能人がシャブを打つと一面記事だ。そういった意味で、これから紹介する凶行は「主語が無い」。性的虐待は被告人の氏名を伏せなければならないのだ。

かといって、日本の現状はプライバシーに配慮しすぎてこの手の性犯罪をあまりにも報道したがらない。性犯罪の厳罰化に伴い、新設された「監護者性交等」は大阪地裁に限っても毎月審理されている。そして、証拠が残らないためにほとんどの被告人は否認する。

以下の記事は「おもしろい」と思って読んでほしい。決しておもしろくはないが、せめて性的虐待の実態を知ってほしいと思う。

  • 家族構成 

2016年に両親は結婚した。母親側の連れ子が被害者となったAちゃんである。

父となった男(45=当時)には前科があったのだが、妻は当初ショックを受けるも事件の内容について調べて、大した事件でなかったので受け入れたという。

個人的には傷害、暴行、恐喝、詐欺で懲役10年、前年2015年に仮出所というのは「大した」事件だとは思うが……母の陳述は後に書くとする。

結婚後は2人の間に次女、三女が生まれる。弟もいたとメモしているが法廷でまったく取り上げられなかったため聞き間違いかもしれない。

  • 被害状況(Aちゃんの証言より)

中学生に上がったAちゃんはビデオリンク方式で証言した。

養父は結婚後まもなく、毎日のように虐待を繰り返した。妻へのDVも同様である。

内容としては、顔、腹、脚などを殴る蹴る。ベルトで複数回背中を叩く(跡が残るほど)髪を引っ張る、など。傍聴席には公開されない形で書画カメラにアザの写真(母が撮影)が示された。私は最前列に座っていたため見えてしまったのだが、こんなアザがあるのかというくらい広範囲でドス黒い被害状況だった。

友達にアザを指摘されたこともあったが、養父の命令に従って、「階段から落ちちゃって……」と嘘をついた。 

夜中に勉強を強制され、風呂で寝てしまうほど疲労も溜まっていた。

性暴力は週一回ペース。養父の仕事が休みの日に行われた。手淫に始まり、フェラチオ(回数はこれがもっとも多かったという)、そして一度だけ、膣内性交に及んだ。これらについて養父は「絶対人に言うな」と口止めした。

事前にAVを見せられ、「お前のに俺のを挿れるからな」と膣内性交の予告をした。ベッドに仰向けになるよう指示されたAちゃんは挿入部分を見ていないが、下半身の痛さに「いたい!」と叫ぶも「静かにしろ」と脅され、以降は小さな声で「いたい、いたい」と言い続けた。あまりに痛がっているので「今日はやめる」と養父。ペニスを抜かれてから痛みがやわらいだ。

「なんでこんなことされるんだろうな」と当時の心境を聞かれてAちゃんは振り返った。嫌だったが暴力を恐れて抵抗できなかったという。また、母親が怒っているときにAちゃんを擁護して「(性行為を)したから助けてやった」とダシにしたこともあった。

弁護側からは自慰経験の有無を聞かれた。争点が性交の有無であるためである。

これについて「(指や物どちらも)したことはない」とAちゃん。生理については小6から始まった。つまり性交のときに生理は始まってなかったと回答した。

また避妊具について、コンドームという名前は知らないものの、中学校の性教育で「性器につけるカバーのようなもの」が存在することは知っていると述べ、養父はコンドームを使っていなかったと答えた。性器からの出血は無かったという。

最後に検察側から処罰感情を聞かれ、「刑務所に行ってほしい。二度と現れないでほしい」とAちゃんの怒りの強さがあらわとなった。 

  • 強制性交等「致傷」となる理由 

ここで説明を加えておく。Aちゃんが性交によってケガをしていないにも関わらず強制性交等致傷となる理由について。

13歳未満の児童が相手の場合、強制性交等罪となるのはいわずと知れているが、判例には「処女を強制性交して処女膜裂傷を生ぜしめた場合には、強制性交等致傷罪が成立する」(最大判昭25.3.15刑集四・三・三五五)というものがある。 

当然ながら被害当時小学4年生であったAちゃんに性交経験があるとは言い難いため致傷となるのだ。後で詳述するが、診察した産婦人科医も裂傷を確認した。 

  • 地獄からの脱出 

2017年11月、養父を除く家族全員がシェルターへ駆け込んだ。

警察から連絡を受けた子ども家庭支援センターの職員は、シェルターを訪問して事情を聞き、Aちゃんから「おまた、おくちに挿れられた」と被害の申告を受け、養父にボコボコにされるから母親には言っていないと聞き、「(父を)許せない」と相談された。

そこで、同伴して産婦人科へ向かい、先述した処女膜裂傷を把握。母親に被害のすべてを告げると、母親は泣きじゃくりながら「(養父を)社会的に抹殺するにはどうしたらいいのか」と聞かれたという。

実際に診察にあたった女性の産婦人科医が証言台に立った。

性暴力は週1~5名を診察しているという。そんなに多いのかと私は絶句した。

診察では、まずAちゃんの性教育の進捗を確認した。女性器の図を見せ、Aちゃんが指差したのは腟口だった。そして視診で9時方向の処女膜断裂を確認。膣鏡診(クスコ)を挿れた際、Aちゃんは「いれられたのはそこ。もっと痛かった」と言った。

腟口より大きなものが入ると出血、浸出液の漏出、発赤などを伴う裂創が生じるが、1週間程度で治癒するため、「断裂」つまり生傷でないことになる。 

しかしながら、クスコが入ったことからも、何かが入った可能性があると証言した。

これに対し、弁護側が要請した産婦人科医(臨床歴34年)は「命題を否定するのは難しい」と前置きした上で、ペニスの挿入以外による裂創、または生来の断裂の可能性を指摘した。また、クスコ診はセカンドレイプになるため初診で使うことはないと、やや診察医を批判する一幕もあった。 

  • 養父の告白 

父母共に在日コリアンであり、貧しさで学校に行けなかったという被告人は、自分のようにならないために子どもに勉強するよう強いていたという。韓国語は一切話せないが、服役したため永住資格の剥奪を恐れていたという。借金が300万円ある(この記事に人種差別の意図は無いことを念の為書き置く)

法廷では暴力を今から考えたら後悔していると涙声で陳述していた。が、虐待の程度は重い。

夜12時にAちゃんを起こし、立ったまま勉強させ、その様子をビデオ撮影していた。風呂に入れると浴槽で寝てしまい、そのことで朝5時、ベルトで何度も叩いた。

「(おぼれて)死ぬ可能性があったから」というが、Aちゃんはすでに死ぬほど辛い目に遭っている。

ちなみになぜベルトなのかというと、小学校の教頭に電話で「顔を叩くのはよくない」(アザがあったため)と言われたから背中をベルトで叩くことにしたという。「今の時代はしつけで暴力はよくない」とも言われたのだが、聞き入れなかった。

  • 妻の意見陳述(被害者側弁護士による代読) 

 以下、手記の内容をかいつまんで紹介する。

「前科があるからこそ更生の思いは強いと思った。ところが家族になると、私たちは召使いのような扱いを受けた。人の心理の本を刑務所でよく読んでいた。ののしられ暴力をふるわれた。Aちゃんの脚のアザを撮影したのは、養父に見せるためというフリをして証拠を残すためだった。機嫌次第でどなったり自由を与えたりし、離婚話をすると『気を引くために別れ話をしてるんだろ?』と取り合ってもらえなかった。子どもが人質のようだった。警察官に励まされて、ようやく洗脳されていたことに気づいた。学校の先生も違和感はもっていたと聞いた。学校からの第一連絡先が養父なのは暴力をふるったのが私だと嘘をつくため。私は自殺も考えたが、生きて子どもに償おうと思う。拘置所で養父は仲間に、『他の人をつかって復讐する』と言っていると聞いた」

  • 結果 

検察側は懲役10年を求刑し、弁護側は傷害と暴行について争わないが強制性交等致傷については無罪を主張した。

判決は求刑を超える懲役11年(未決勾留日数680日算入) だった。

Aちゃんの性交に関する供述には相応の迫真性があり、被告人が中断したことまで述べ、恨みによる嘘であるとは考えられない。よって13歳未満と知りながら性交によって全治1週間を要する処女膜裂傷を追わせた、と強制性交等致傷を認定。

犯行は言葉に尽くしがたい苦痛を被害者に与え、愛情によるしつけとは到底考えられない。強制性交等のみであっても懲役10年であるところだが、本件は13歳未満の児童に対する性交の中でも特に重いケースであり、累犯加重の上で求刑を上回る結果となった。というのが理由である。

 

傍論だが、Aちゃんは性教育を受けたために、被害を余計に言い出せなくなったとも言っていた。こういったケースに対応できる性教育が可能なのかは専門家でないためわからないが、性教育の難しさを感じた事件であった。