今日もまた、傍聴席に座っている。

雑記ブログですが、主に裁判傍聴記・事件現場取材を書いています。

3人を殺したとされる陳春根が死刑回避できた理由(殺人、逮捕監禁致死、生命身体加害略取)

  • 刑事裁判:大阪高等裁判所、第1刑事部、第一回~(判決)
  • 罪状および罰条:殺人、逮捕監禁致死(2件)、逮捕監禁致傷、生命身体加害略取、強要、恐喝、有印私文書偽造・同行使、覚醒剤取締法違反(以上はすべて第一回公判時のもの)

本件について記事を起こそうとは思ってなかったが、「3人も殺したのになぜ死刑じゃないのか」とか「在日朝鮮人割」などといった、報道をあまり読んでいない意見が多い上、控訴審判決の記事はどうしても簡素になる傾向があるためマスコミにも責任はあると思う。そこで私が、たまたま取材で大阪高裁にいたため聞き知った事柄を書き置く。

第1刑事部の担当と知って雲行きが怪しいと思った。というのも1刑は現在(2021年1月30日)、控訴棄却係のような気がしてならないからだ。

201号法廷はアクリルの板で当事者席と傍聴席を完全に遮断するという異例の態勢で行われ、刑務官も2倍の4人で陳被告人を取り囲んでいた。

弁護に立ったのは関西随一の弁護士とうたわれる後藤貞人先生。ほか3人の弁護団を引き連れていた。この弁護団が被告人を死の瀬戸際から救い出したのだ。この事件では3人の殺人が疑われているものの、2人の遺体が見つかっておらず、1人について一審は無罪判決を言い渡した。被害者2人なら死刑回避の公算が高まるため、まさにギリギリの攻防だったといえよう。

陳被告はいずれの罪についても無罪を主張しているため、弁護人はプレゼンを行い(裁判長が「プレゼン」と言っていたためプレゼンなのだ)、防御を展開した。

その防御というのが私のよく見る弁護とまるで違い、まず起訴前の段階から、司法取引や兵庫県警内の裏取引を主張し、検察に対して訴追裁量権の逸脱を糾弾した。

また、起訴状においても「拳銃などのなんらかの方法で」殺害したという記載に、拳銃を例示することで予断を抱かせようとしているため、公訴棄却すべきであると主張。また、殺害の方法を示されないことには防御できないと起訴状の不備も併せて指摘した。

ここで止めておくがとにかく「アツい」弁護が展開され、傍聴席には多くの弁護士が勉強に来ていたのもうなづける。

ところが、弁論の再開と証拠請求を求める検察側・弁護側双方の趣意書を裁判所は却下。

「あー、はいはい、陳は控訴棄却で無期懲役が確定ね」としらけてしまった。

私は大阪地裁の別件を優先して、判決を聞きに行かなかった。取材が済んで、高裁も終わったようだったので知り合いの記者に聞くと、「棄却でしたね」とのことだった。

ただ、今後もし、遺体が見つかれば再審が始まる。裏社会ルートで処分されていると思われるのでそうそう見つからないとは思うが……被害者の無念を考えると、できれば再審になればと思う。