今日もまた、傍聴席に座っている。

雑記ブログですが、主に裁判傍聴記・事件現場取材を書いています。

サムハラ神社わいせつ事件の真相(川端孝和)(準強制わいせつ)

  • 刑事裁判:大阪地方裁判所、第5刑事部2係、審理~判決
  • 罪名及び罰条:準強制わいせつ(刑法178条1項)

報道は以下の通り。

www.reuters.com

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全国的に有名だが境内はかなり小規模。
  • 崩れ去った否認

2020年12月~21年1月の間、大阪市東住吉区禰宜(「ねぎ」と読み、神社では中心的な役職)、川端孝和(70)は勤務先である大阪市西区のサムハラ神社にて、祈祷の一環としてわいせつ行為に及んだ。

2人の女性から被害届が提出されたのだが、逮捕時に川端は容疑を否認。しかし、もう1人の女性からも被害の申告があり、ついに白状した。

  • 被害の内容

2020年12月26日、Aさん(被害者はいずれも30代)は祈祷に使われる神楽鈴を胸に押し当てられたのち、胸や尻を触られた。参拝客は土間に並べられた椅子に座って祈祷を受けるのだが、川端は通常と異なり、本殿から土間に下りて犯行に及んでいた。しかも、他の参拝客に見られぬよう、柱の陰に被害者を移動させている。

翌年1月9日にはBさんがセーターの中に手を差し入れて胸などを触られ、同月19日にはCさんも被害に遭った。

  • 激務のサムハラ神社

定年まで市役所に勤めていた川端は、ハローワークでサムハラ神社の求人を見つけ、亡父や妻がよく参拝していた縁から応募して採用された。半年ほど祝詞を練習し、1年後には先輩の指示で祈祷を始めたという。

「祈祷に資格はいらないのか」との弁護人の質問には「神社本庁の絡みがありますので……」とサムハラ神社では資格が不要であると答えた。これを少し解説すると、大半の神社は神社本庁という全国の神社を統括する機関に所属しており、神社庁の研修や神道系の大学を出るなどして〝階位〟というものを得て神職は社務を行える。ところがサムハラ神社は神社本庁に所属していないため、資格は要らないということだ。とはいえ、最近は規模の大きい有名神社も本庁から離脱していたりするが。

祈祷は3名でローテーションしていたのだが、サムハラ神社は〝御神環〟と呼ばれる指環が全国的に有名であり、在庫を確認する電話が鳴りっぱなしの状況で、激務に追われていた。20年1月~5月の間は、急激な体重減少や耳鳴りで休職に至っている。復職すると新人が入っていたが、すぐに辞めてしまった。

  • 芽生えた出来心

きっかけは腰痛に悩む高齢女性だった。20年11月下旬、神殿から下りてパイプ椅子の女性の腰に神楽鈴を当てたのが諸悪の始まりとなってしまう。川端は真光教の手をかざす治療を受けた経験から鈴を当ててみたのだが、後日、彼女から「よくなった気がします」と感謝された。

それからは鈴祓いのあとに痛みのあるところを聞いて鈴を当てるようになった。また、SMSで祈祷の効果を聞くようにもなった。

翌月下旬からは手で触るようになり、Aさんが前述の被害を受ける。「気分が高揚して一線を越えてしまった」という川端はAさんにも「気分はどうですか」とメッセージを送り、Aさんにとってはこれが一番のトラウマになった。

Aさんに対してどう思っているかを弁護人に聞かれた彼は「大変申し訳無い。再度は起こさない」と述べた。被害者の中ではAさんだけが謝罪文の受け取りを拒否しており、「街中で男性が歩いているだけで怖い」と供述している。

検察官はAさんへの犯行の理由を問いただした。川端は「性的に興奮したため」と素直に答えたが、鈴を胸に押し当てたときは興奮していないとも言った。これに対し、「Aさんは『胸が痛い』とは言っていないですよね?」と追求されると、彼はしばし黙りこくった。Aさんへのメッセージは犯行当日の夜と翌朝に送信しており、「わいせつの後にお祓いの感想を聞いたのは自分としてどう思う?」との問いには「禍事(まがごと)の方が気になっていた」。発覚するかどうかは気にならなかったといい、「本人さんはご祈祷と思っているだろう」と気楽に構えていた。

  • 双方の意見

検察側は、卑劣かつ危険な犯行で相応に悪質である。信頼を逆手に取った犯行で被害者に強い恐怖感と嫌悪感を与え、処罰感情は強い。結果は重大であり、身勝手で常習的な犯行として、懲役2年を求刑した。

弁護側は、当初からわいせつの意思は無く、SMSは日常的に使用していて性的な意図はない。仕事に熱心なあまり過労となっており、懲戒解雇を受けた。前科は無く、天満警察署で2ヶ月間の留置を受けた。妻が今後の監督を約束しており、再犯の恐れはないとして、執行猶予を求めた。

最終陳述にて川端は「被害者や神社に迷惑をかけた。もう二度と起こさない」と反省の弁を述べた。

  • 結果

判決は、懲役2年執行猶予4年であった。

Aさんには示談金として70万円、B・Cさんには50万円を支払っており、Cさんからは宥恕が得られていたことなどが理由として挙げられた。

 

神社の信頼を傷つけた罪も大きい。