今日もまた、傍聴席に座っている。

雑記ブログですが、主に裁判傍聴記・事件現場取材を書いています。

一命をとりとめた古瀬巡査長が出廷・吹田署交番襲撃事件(飯森裕次郎)(速報)(強盗殺人未遂、公務執行妨害、銃刀法違反)

(※2021年7月19日の初公判を記事にしたものです。公判が進み次第、追記していきます)

  • 大阪中が戦慄した拳銃強奪

2019年6月16日午前5時38分ごろ、大阪府吹田市千里山交番にて品川区の無職、飯森裕次郎(35)が出刃包丁(刃渡り約16.8cm)を手に、バイクを発進させるところだった古瀬鈴之佑巡査(27=当時)を襲撃。胸や背中、両脚などを複数回刺し、左肺を部分切除するほどの重症を負わせた。

拳銃を奪った飯森は付近の住宅街で1発発砲。池でナップサックや上着を捨て、側溝にもTシャツを捨てるなどした後、関大前駅から北千里駅へ電車で移動した。下車後は新たな衣服と帽子、虫除けスプレーを購入して箕面市の勝尾山へ向かった。

翌17日早朝、捜査員に発見され逮捕。その際、拳銃の場所を問われると「俺が殺したいやつ全員殺したら教えてやる」と答えた。

公判では、事実関係に争いは無く、統合失調症についても両者が認めた上で、検察側は限定責任能力があったとした。弁護側は刑事責任能力が無かったとして無罪主張。争点は有罪ならば量刑、さもなくば無罪か否かといったところだろう。

  • 初公判で被害者本人の証人尋問

通例、大きな事件の初公判では証拠調べ(裁判員裁判の場合は統合捜査報告書の説明)で1日が終わることが多いのだが、この日は違った。

いまだリハビリを続けているという古瀬巡査長(事件後に昇任)本人が出廷したのだ。

「人の役に立ちたいと思ったから」警察官になったという彼は、事件当時まだ任官して1年半だった。交番には彼を含めて3人の警察官がいたのだが、飯森による虚偽の110番通報を受けて、先輩2人が出動した。

夜間は2人以上での行動が義務付けられているため、古瀬巡査も後を追うためバイクに跨り、エンジンキーを差し込んだところへ「おい」という呼びかけに振り返った。すると、距離1mの近さで男が包丁を逆手に持って立っていた。野球のピッチャーの投球のような軌跡で男は包丁を振り下ろし、古瀬巡査はバイクに跨ったまま後ろにのけぞって避けた。バイクから降りようとしたが、衣服とエンジンキーがカールコードでつながっていたため離れられず、また、キーが抜けた反動で片膝をついてしまい隙ができてしまった。

両脚を刺された古瀬巡査は植え込みにうつ伏せで倒れ込み、あおむけに体勢を変えるも飯森に跨がられて10回以上刺されたり殴ったりされた。ボクシングのガードの要領で身を守りながら「やめろ」と声をかけたが飯森は終始無言だった。

左胸に包丁を刺したまま、飯森は拳銃を奪おうとしたが、古瀬巡査は二次被害を防ぐため懸命に飯森の手を両手で抑えた。しかし入れ物であるホルスターから拳銃が取られ、取り合いになったものの自身の出血で手が滑り、最終的に奪われてしまった。安全ヒモであるカールコードを外されたとき、自分が撃たれて死ぬと思ったという。

だが、飯森は古瀬巡査に背を向け立ち去った。古瀬巡査は「他の人に使うなよ」と願いながら意識を失った。

  • 奇跡の生還

事件から2日後、意識を取り戻したときにベッドの脇には家族がいた。生き延びたことより最初に思ったのは「警察を辞めなきゃ」という拳銃を奪われた自責の念だった。左肺の部分切除など複数回の手術を受け、転院してからも4ヶ月入院し、合わせると半年以上入院していた。今も通院していて、左胸の感覚は無く、両脚の感覚も鈍く走れない。肺の年齢は60歳くらいと医師に告げられ、階段の上り下りやジョギングで息が上がってしまうという。

20年1月に復職してからは事務に従事していて、刑事課などの現場仕事を希望していたが、今の状況では無理と言われている。それでも、家族や同僚、上司のフォローを受けたため、これからも警察官を続けたいと語った。

最後に検察官から言いたいことはあるかと問われ、彼はまず「市民の皆さんに怖い思いをさせてしまって申し訳ない」と述べ、被告人については「自分の口で動機などを話してほしい」(抄)と落ち着いた口調で答えた。

  • 深々と頭を下げ続けた被告人の両親

裁判官・裁判員からは、刺された順番が記憶にあるかを質問されたが、最初の傷から記憶に無く、背中を刺されたことも覚えていない上、出血には数ヶ所刺された後に気づいたと回答した。また、警棒などの武器を使わなかったことについては後悔しているという。

古瀬巡査長の証人尋問が終わり、この日は閉廷した。

関係者には被告人の両親が座っていた。既報の通り、父親は関西テレビの取締役を辞任した方である。2人は古瀬巡査長が退廷するまで深々と頭を下げていた。

 

(※公判の進行により随時追記します。)